俺様ドクターに捕獲されました
* * *
彼に手を引かれてマンションの部屋に入ると、彼は優しい仕草で私をソファに座らせた。そのままキッチンに向かって、コップにミネラルウォーターを注いで私に差し出す。
「ほら、水飲めよ。気分が悪いとかないか?」
「だ、大丈夫……。ありがとう」
それを受け取って、少しずつ口に含む。少し時間が経って冷静になってしまったからか、どことなく気恥ずかしくて彼の顔を見ることができない。
気まずさをごまかすようにミネラルウォーターを飲み続けていると、彼がその空気を打ち破るように話し出した。
「りい、さっき言ってたことだけど。俺が取っかえひっかえって話。あれ、誤解だからな。ああなったのは、尊のせいだから」
「え? お兄ちゃんの?」
コクリとうなずいた彼は、真剣な顔で私を見つめている。これは真剣に聞かなければと、コップを水に置くと彼はずいっと顔を近づけてきた。
「あのな、あいつはお前が思っている以上に性格が悪い。俺や亮太なんか比じゃないくらいにな。それに、とんでもないシスコンだ。お前のまわりに見張り役を置いて監視するくらいだからな。今の会社にもいるかもしれないぞ」
え、やっぱりそういう人がいたんだ。だけど、お兄ちゃんが? ずっと、優ちゃんがなにかしていたのだと思っていた。
そんな私の視線に気づいたのか、彼は苦い顔で首を横に振る。