俺様ドクターに捕獲されました
ずっと苦しかったのに。お兄ちゃんもひどいけど、彼だってひどい。せっかく止まっていた涙が、また流れ始める。
泣き始めた私を見て、彼は珍しくうろたえ始めた。心なしか、目元が赤い気がする。
「い、言わなくても……わかるだろ。ずっと俺のものって宣言してたし、キスだって……」
視線を揺らした彼の顔が赤く見えるのは、どうやら気のせいではない。目を丸くしている私を、ひどく照れくさそうに口元を手で隠した彼が見つめて……。
「……好きだ。俺が好きなのは、ずっとりいだけだ」
彼は、ずっと欲しかった言葉を私にくれた。ポロポロと涙があふれて止まらなくて、私は手で顔を覆った。
「うぅ……。いや、だったんだから。他の女の人が、優ちゃんの隣にいるの」
「うん」
「私だって、他の人が優ちゃんに触れるのいやだ。なのに、腕、組んで……」
「うん、ごめん。俺が悪かった」
そう答える彼の声が、なぜだか弾んでいる。チラリと指の隙間から彼の表情を盗み見た私は、ムッと唇を尖らせた。
「な、なに笑ってるの」
「ああ、悪い。りいがかわいすぎて。そんなふうに思ってくれてたのかって、感動してる」
「……ひどい、苦しかったのに」
「うん、ごめん。りい、好きだ」
ずっと聞きたかった言葉に、涙をこぼす私を、彼ぎゅっと抱きしめる。ふいに、甘い香りが鼻腔を掠めた。これ、女物の香水の香りーー。