俺様ドクターに捕獲されました
「い、いやー!」
その香りの正体に気づいた瞬間、私は彼の身体を力いっぱい突き飛ばした。ふいをつかれたのか、ソファから落ちて彼は床に倒れ込む。
そんな彼から、私は身を守るように自分の身体を抱きしめながら距離をとった。
「いって! なんだよ、その反応。そこはおとなしく抱きしめられるところだろ。なんで逃げるんだよ」
「だ、だって……優ちゃんから、あの人の匂いがする」
距離を詰めてくる彼から逃げながらそう言うと、彼は自分の身体の匂いを嗅ぎ始める。
「あー、本当だ。着替えたのに匂いが残るってどんだけだよ。医者が職場で香水つけるなよな。でもお前だって、亮太の匂い移ってるからな。思いっきり抱きつきやがって。なのに俺は突き飛ばされるとか、腹立つ」
「だって、それは、優ちゃんが……」
「わかってるよ。本当、助けなきゃよかった。あー、もう。こっち来い」
部屋の端まで逃げていた私の腕を掴んだ彼が、リビングを横切って廊下に出た。大股で歩いていく彼に引きずられながら辿り着いた先は、バスルームだった。
「ええ!? ちょっと、優ちゃん? な、なにする気?」
服を着たまま浴室に連れ込まれて、ビクビクする私に彼はニヤッと笑ってシャワーを向けた。
「なにって、こうする」
彼が蛇口を捻ると、冷たい水が身体にかかり小さな悲鳴が漏れる。すぐにそれは温かいお湯に変わったけれど、あ、ありえない。