俺様ドクターに捕獲されました
「りいが逃げたときの、尊のあの勝ち誇った顔。一生忘れないわ。ただでさえ、高校を卒業するまで手出すなって言われて我慢してたのに」
「え? だって、キス……」
私のファーストキス、十三歳のときなんですけど。そのあとも何回もされてるし、ディープなキスだってされたるんですが。
「あれは……キャンキャン噛みついてくるりいがかわいくてつい。お前だって、拒まなかっただろ」
「それは……。でも、なんでキスされるのかわからなくて苦しかったよ」
「ごめんらりいも俺と同じ気持ちでいてくれてると思ってたから、照れくさくてな。言葉が足りなかったな。まあ、尊の思惑通りってところか」
「お兄ちゃんの、思惑?」
「りいは、俺とあいつが親友だと思ってるんだろうけど、親友ではないからな。しょっちゅう一緒にいたのはりいがいたからだ。り合ってよく喧嘩してたし、よく巻き込まれて泣いてただろ? りいが生まれた瞬間から、あいつとはライバルだ。りいのことを簡単に渡すつもりはないって宣言されたからな。……いろいろ思い出したら、腹立ってきた。本当、ムカつく男」
顔をあげた彼が、私の顔を後ろから覗き込みふっと笑う。近づいてきた顔に自然に目を閉じると、私より少し冷たい唇が優しく触れた。
「りいはこんなにかわいいのに。あの悪魔と兄妹なんて信じられない。生まれたときから、りいは天使みたいにかわいかった」
お兄ちゃん、すごい言われよう……。菅谷先生にも悪魔って言われてたし、いったいなにやらかしてきたのやら。それにしても、て、天使って……。