俺様ドクターに捕獲されました
「行こう、優ちゃん。おばちゃん、きっと私たちのこと待ってるよ」
「……ああ、そうだな。行こう」
急いでマンションを出て、車に乗り込む。もう明るくなっている道を走りながら、私はハンドルを握る彼の腕をずっと掴んでいた。なぜだか、そうしていないといけない気がしたのだ。
車中でも病院に着いてからも、私たちは一言も話さなかった。ただ、手を繋いで、夜間入口から中に入り病室へ向かう。
おばちゃんは、私たちをやっぱり待っていてくれた。
でも、もう意識はない。ベッドサイドにある心拍数モニターを見ると、徐々にその数値が落ちているのがわかった。
「おばちゃん、来たよ」
彼がそう言って、おばちゃんの手を握った。その手が、握り返してくれることはもうない。
だから代わりに、私が彼の手に自分の手重ねてそっと握った。
「おばちゃん、私も来たよ。優ちゃんの、隣にいるからね」
例え意識がなくとも、人間の聴覚は死を迎える直前まで残るという。でもきっと、この声は聞こえている。
「あ、宇佐美先生。里衣子も、お疲れ様です」
おばちゃんの手を握っていると、今日は夜勤だったらしい莉乃が病室に入ってきた。
「ああ、お疲れ様。電話、ありがとな。ご家族は?」
「連絡はしました。お家が遠方なので、間に合うか……」