俺様ドクターに捕獲されました
「……そうか。俺たちが見てるから、他の患者見てていいぞ。呼吸が、止まりそうだ」
彼の言葉に、莉乃が小さくお辞儀をして病室を出て行く。彼に寄り添いながら、おばちゃんの顔を見つめる。
思い浮かぶのは、ひまわりのような明るい笑顔。
怒られることもあったけど、必ずそのあとはその笑顔で頭をなでてくれた。
「呼吸、止まるな」
彼がそっとおばちゃんの頭をなでる。昔、おばちゃんが私たちにしてくれたように。モニター上の数値が、ゆっくりと落ちていく。おばちゃんの人生が、終わろうとしている。
「……おばちゃん、ありがとう。もう苦しいことはないから。……お疲れ様」
彼がおばちゃんの頬をなでて、手を離した。耐えきれず、目から涙がこぼれる。
そして、おばちゃんは、口元にうっすらと笑みを浮かべて天国に旅立っていった。
最期の瞬間を見守って、涙を拭いながら黙って病室を出ようとする彼の手を慌てて掴む。
「優ちゃん、どこ行くの?」
「当直が亮太だから、ちょっと話してくる。家族がきたら呼んで。俺が説明するから」
やんわりと私の手を外して、彼は背を向けて病室を出て行く。追いかけたい衝動に駆られるが、おばちゃんをひとりにはできないし、最期の処置にも立ち会いたい。
迷った末、私は彼を追いかけることを諦めて椅子に座っておばちゃんの顔を眺めた。