俺様ドクターに捕獲されました
「わかった。今度からは、ちゃんと連絡する。……ただいま、りい」
「お、おかえりなさい」
当たり前の返答をしただけなのに、なぜだか彼はうれしそうに笑って頰をすり寄せてくる。
「痛い、痛い! ヒゲが痛い!」
「ああ、悪い。今朝、剃るの忘れた。やっと早く帰ってこれたんだ。今日は俺をしっかり癒せよ、りい」
「……はい」
彼の言葉についにきた、と思いながらも、コクリと素直にうなずいてしまう。
彼の専門とする消化器外科は、治療する範囲が広く、手術の件数が多い。手術日には昼の休憩もとれずに朝から晩まで切りっぱなしなんていうこともザラな科だ。
多忙さではトップクラスの消化器外科医である彼は、いつ帰ってきているのかわからないほど毎日帰りが遅い。帰ってきたと思ったらまた病院に呼び出される、なんてこともあった。
私の部屋として一室与えてもらっているから、最初の頃はそこで寝ていた。
だけど、朝起きるとたいてい、隣に彼がいる。夜中に帰ってきて、私の布団に忍び込んでいるらしい。
シングルの布団に、大人ふたりはさすがに狭い。しかも彼は、背が高い。たしか一八五センチ近くあったはずだ。
夜中まで仕事をして帰ってきた人が、布団からはみ出て眠っている。それも半裸で。