俺様ドクターに捕獲されました
「そうだね。だから、きっと優ちゃんに見合ういい奥さんに巡り会えるよ。モテモテでしょうし」
それは、確実に私ではない。私は、身の丈に合った相手と、平凡で幸せな家庭を築きたい。
若干、嫌味っぽい口調にはなってしまったが、身の程は弁えている。
「りい、お前……」
「よし! じゃあ、トリートメントの用意をしておくから。ゆっくりしてきてね」
彼がなにか言う前に、バスルームを出てリビングに向かう。
そこにある大きなソファベッドを倒して、大きめのバスタオルを敷いてトリートメントの準備をする。
初めてここに来たときに、いつもベッドで施術をしていたと言われたが、あんなの嘘っぱちもいいところだったらしい。
佳乃さんに聞いたら、いつもここでやっていたと教えてくれた。
彼からも佳乃さんに連絡をいれたらしく、私が担当することになったことを、すごく喜んでいた。
旦那さんが彼の同期で、佳乃さん自身も同じ大学出身だからなかなか長い付き合いらしいけど、どれだけ厄介なお客様だったんだろう……。
お客様になったきっかけは、セラピストの学校に通っていた佳乃さんの練習台になったことだというが、あんなに不健康なくせに、絶対に足しかやらせなかったらしい。
私に全身のトリートメントを許したのは、きっと幼なじみだからだろうな。