空高く、舞い上がれっ。
途中で輝空くんが躓いて転んだ。
起き上がり振り返ろうとした輝空くんに、雪ダマをぶつけて笑いだしたわたし。

“お前卑怯だ‼”
“どっちが卑怯よ”

小学生のようにはしゃいで、手が霜焼けになりそうになるまで遊んだ。


雪合戦に疲れ木の下に座った輝空くんは、わたしに背を向けて何かをし始めた。
何してるの?と、のぞき込むとそこには小さな雪だるまが。

「一人じゃかわいそうだから雪だるまの家族を作ってあげるね」

雪をかき集めてわたしも雪だるまを作り始めた。


「歩舞、ありがとう」

「え?」

急に聞こえたその言葉の意味がわたしにはわからない。

「俺、監督に野球続けていくか迷ってるって言ったんだ」

一瞬、胸がズキッと痛んだ。

「……そしたら、まだ考えろって言われて……しばらく保留にされたけど……」

わたしは静かに聞いていた。
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