彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)
(はぁードキドキしたら、汗かいちゃった・・・・)
いったん冷蔵庫を閉めに戻り、その扉を閉めながら思う。
飲み物のおかげでのどは潤ったけど、びっくりしたおかげで汗をかいてしまった。
(まぁ、もともと着込んでるからね・・・・)
浴衣の上にアンダーシャツとか、目立つよね。
目立たないようにしてるのに、目立つことしちゃって・・・・それにしても、汗で気持ち悪い。
「あ~・・・・温泉入って、汗を流して着替えたいな・・・・」
闇に慣れた目で部屋の時計を見る。
時刻は夜中の2時過ぎ。
(・・・・ここの温泉、24時間営業だって言ってたよね・・・?)
ほんの軽い気持ちだった。
(この時間に入ったら、誰にも見つからないんじゃないかな・・・・?)
あわい期待と好奇心から、私は動いてしまった。
部屋に用意されていた露天風呂用のタオルを・・・・お風呂セット一式を手に取る。
「んん~・・・・凛を返せ、馬鹿田渕・・・・!!」
(まだ怒ってる。悪くないセリフだからいいけど・・・♪)
そーと彼の側を通った時、その体が横を向く。
同時に、瑞希お兄ちゃんにかかっていた布団がパサッとめくれる。
「あ。」
仕方ないな・・・♪
内心、まんざらでもない思いで瑞希お兄ちゃんの枕元へ向かう。
「風邪ひいちゃいますよ?」
小声で、耳元でささやく。
起きない彼に気をよくしながら、布団を体にかけてあげる。
「おやすみなさい、瑞希お兄ちゃん。」
ポンポンと、胸の当たりを軽く叩いて眠りの挨拶をする。
それを済ませると、そっと立ち上がって出入り口に向かう。
ぬきあし、さしあし、しのびあし。
引き戸をそっと開けて占めて、カードキーでカギをかける。
「よし!」
(真夜中の温泉へレッツゴー!!)
人間とはダメと言われたことほどやりたくなるもの。
真夜中という状況と、廊下の明るい照明でテンションが上がる。
こうして凛は、禁断の温泉へと向かってしまったのだった。