彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)
「もしかして、露天風呂に行かれる途中でしたか?」
「いやいや!そんな!めっそうもない!」
「ふふふ・・・大丈夫ですよ。お連れ様には申しませんから。お客様のプライバシーに関することでございますからね?」
「いや、でも!お風呂、お姉さん達のグループが入ろうって言ってて、なんというか~」
「え!?もしや、小谷様一行かしら・・・?困ったわね・・・」
「え?なにが困るんですか?」
「いえ、急に照明の調子が悪くなったので・・・業者を呼んで修理をしているので、お入りいただけないんですよ。」
「え!?じゃあ、お風呂に入れないんですか!?」
「大丈夫です。」
驚く私に、女将さんはニッコリしながら言った。
「凛道様がお入りになる分には、問題ございません。」
「え!?僕は、いいんですか?」
「ほほほ。もちろんですよ。ご迷惑でなければ、特別に当店自慢のお風呂にご案内いたしますよ?獅子島様にはいつもごひいきにして頂いておりますので、熱燗の代わりにお好きなドリンクをサービスでお付けいたしますよ。」
「ええ!?そ、そんな、悪いです・・・・」
「ご遠慮なさらないでください。無理強いはしませんが、いかがでしょう?今宵は月が綺麗ですよ?」
「そ、そうですか・・・・」
どうしよう。
お風呂修理中だったのか。
『特別なお風呂』に連れて行ってもらえるなら、さっきの女子会グループと女湯で鉢合わせはないよね。
ゆっくり1人で入れそう。
(女の子だってバレる心配ないはずよ・・・!)
「じゃ、じゃあ、行きます。」
「かしこまりました。では、ご案内いたします。」
高級旅館の女将に相応しく、キレイなお辞儀をされる。
「こ、こちらこそ!」
それに応えるように、慌てて頭を下げたらクスッと笑われた。
「本当に素直な方ですね・・・獅子島様がお気に召すはずですわ。」
「いや、それはないと思います。そういう要素を見たことないですから。」
「おほほほ・・・・それもいずれ、お分かりになりますよ?」
(そういうもんかな・・・・?)
熟女の言葉に首をかしげる。
ともあれ、興味のあった温泉に入れることになったので、気持ちが浮かれていたのは間違いなかった。