彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)
「お気遣いは結構だと申し上げたじゃないですか!?」
《はい、わたくしもそうお伝えしたのですが、代わりに持って行くとおっしゃいまして。》
「お伝えした?」
というか。
「『代わりに持って行く』・・・?」
「お、いたいた!りーん!」
女将さんへの疑問は、その声ですぐに解決する。
「お前、お風呂も怖いとか言いながら、貸し切りなんかしやがって~」
「・・・・・・え?」
そう言って、氷とストローの入ったグラスを持って現れたのは――――
「み、瑞希お兄ちゃんっ!!?」
ぎゃああああああああああああ!?
(二度目の入浴トラブルキタ―――――――――――――!!?)
「な、ななななな、何で瑞希お兄ちゃんが!?」
「俺だけじゃないぜ?」
「へ!?」
「よぉ~凛たん!」
「一人で風呂とは言い御身分じゃないか、凛道?」
「おほほほほ!!この瞬間をずっと待ってたわよぉ~凛ちゅわぁ~ん♪」
「わははははは!」
「ぎゃああああああああああ!!?」
+アルファもキタ――――――――!?
「お、女将さん、これはいったいどういうことで!?」
《いえ、お飲み物をお持ちした際、凛道様をお探しの真田様一行とお会いしまして。凛道様が迷子だとお聞きしましたので、つい、お話してしまいまして・・・》
「僕は迷子じゃなーい!」
「あはははは!そーゆ~なよ、凛!」
腰にタオルを巻いた姿で、私へと近づいてきた瑞希お兄ちゃんが言った。
「男同士、裸の付き合いと行こうぜ?」
「は、ははは・・・・・」
胸キュンな顔で言われ、いつもならときめくけど今はかわいた笑みしか出てこない。
(裸の付き合いって―――――――――)
好きな人だけならまだしも、その他大勢の男の人の前で――――――――――
(できるかぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――!!!!)
最悪のパターンで正体がばれるどころか、ただの変態女にしかならないじゃん!?
(こ、今度こそ、絶対にバレるぅ・・・・・!!)
「お、おい、どうした凛!?」
ガックリと力が抜けて、ブクブクと額まで湯船に顔を鎮める私。
そんな私を心配する瑞希お兄ちゃんの声が、水面越しでもやけにはっきりと聞こえた。
〔★修羅場タイムがスタートした★〕