彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)





外は明るくなり始めていた。

夏は夜明けが早くて助かる。





「あった!庭園・・・・!」





湯上りで苦しい呼吸を整える。

下駄のまま芝生の上に降りる。




(私が犯人だったら、どうする?)





そう考えて立ち止まる。





(犯人は、水着姿だった・・・・あれじゃあ、すぐに見つかる。そうなれば、服が必要になるよね・・・)





このリゾート地帯は、各旅館やホテルの浴衣や部屋着で歩き回っていいルールになってる。





(そうなると服を奪いに来るわよね・・・)





キョロキョロと見渡すが、人がいる気配がしない。





「広すぎるんだよね・・・・」





お茶会をする庭園なだけあって、キレイに整った木々が茂っている。

大人がかくれんぼをするのにもいいぐらいだった。

外用の下駄が置いてあったので、履き替えて庭に降りてみる。

ウロウロする。

犯人の痕跡がないか探す。





「だめだ・・・」


(地面も・・・・芝生だから足跡も残ってない。たどれない・・・)


「・・・・困ったな・・・・」





犯人が逃げた方向じゃなくて、逃げていたかもしれない場所へ来たつもりだったけど・・・。





「ここじゃないかも・・・・」





そう思った時、強い風が吹く。





「はぁ~気持ちいい風・・・・。あ・・・・?」





風にのっていい香りがした。





(これ、椿のかおり・・・・?)





花も咲いているけど、こんなに強くにおいを感じる距離じゃない。


というか。



「咲くのは、11月から4月までじゃなかったっけ・・・・・?」





今、真夏だよね?

おかしくない??

そう思ったら、記憶の談判がよみがえる。





“椿油のシャンプーぶっかけてやったわ!”




「あ。」




犯人、シャンプー、強くなる椿の香り。





「―――――――――後ろかっ!!?」




ニオイが一番強くなった瞬間、背後に向かって回し蹴りをくりだしていた。






バシ!

「うお!?」


「やっぱり!!」






蹴りはあたらず、水着姿の男のゴーグルをかすめただけだった。



< 94 / 453 >

この作品をシェア

pagetop