彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)
外は明るくなり始めていた。
夏は夜明けが早くて助かる。
「あった!庭園・・・・!」
湯上りで苦しい呼吸を整える。
下駄のまま芝生の上に降りる。
(私が犯人だったら、どうする?)
そう考えて立ち止まる。
(犯人は、水着姿だった・・・・あれじゃあ、すぐに見つかる。そうなれば、服が必要になるよね・・・)
このリゾート地帯は、各旅館やホテルの浴衣や部屋着で歩き回っていいルールになってる。
(そうなると服を奪いに来るわよね・・・)
キョロキョロと見渡すが、人がいる気配がしない。
「広すぎるんだよね・・・・」
お茶会をする庭園なだけあって、キレイに整った木々が茂っている。
大人がかくれんぼをするのにもいいぐらいだった。
外用の下駄が置いてあったので、履き替えて庭に降りてみる。
ウロウロする。
犯人の痕跡がないか探す。
「だめだ・・・」
(地面も・・・・芝生だから足跡も残ってない。たどれない・・・)
「・・・・困ったな・・・・」
犯人が逃げた方向じゃなくて、逃げていたかもしれない場所へ来たつもりだったけど・・・。
「ここじゃないかも・・・・」
そう思った時、強い風が吹く。
「はぁ~気持ちいい風・・・・。あ・・・・?」
風にのっていい香りがした。
(これ、椿のかおり・・・・?)
花も咲いているけど、こんなに強くにおいを感じる距離じゃない。
というか。
「咲くのは、11月から4月までじゃなかったっけ・・・・・?」
今、真夏だよね?
おかしくない??
そう思ったら、記憶の談判がよみがえる。
“椿油のシャンプーぶっかけてやったわ!”
「あ。」
犯人、シャンプー、強くなる椿の香り。
「―――――――――後ろかっ!!?」
ニオイが一番強くなった瞬間、背後に向かって回し蹴りをくりだしていた。
バシ!
「うお!?」
「やっぱり!!」
蹴りはあたらず、水着姿の男のゴーグルをかすめただけだった。