契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
夢の中で髪を撫でられる。その手つきは、どこか遠慮がちだ。それでも鈴音は、心地よさを感じ、目を開けようとはしない。
「鈴音」
しかし、耳に入ってきた声で、瞬時に意識がはっきりする。パッと見ると、ベッド脇に腰を掛けていた忍に覗き込まれていた。
鈴音は飛び起き、ベッドの上で正座する。忍がスーツ姿なのを見て、寝坊したのだとわかり、心底焦った。
「すっ、すみません! 私、寝坊して……」
昨夜、緊張していてすぐに寝付けないのもあったが、夜中に忍が苦しそうにしていて、鈴音が痛み止めを用意したりということがあった。
薬を飲んだあとは、忍もすぐに横になって休んでいたが、鈴音は神経が昂ってしまって眠れなかった。
なんともないという顔をして、平気だなどと言っているものの、やっぱりそんなことはないんだと考え始めてしまったせいだ。
そこからは罪悪感ばかりが大きくなっていき、考え疲れたところでやっと眠りについたというわけだ。そんな経緯から、鈴音は寝坊をした。
「まだ七時過ぎだ。遅刻はしないだろ?」
「七時……。はい、私は大丈夫です。……っていうか、仕事に行くんですか? 怪我は大丈夫なんですか?」
「ああ。あの後は普通に眠れたし、平気だろ」
昨日、夜中に起きてしまうほど痛むはずなのに、ケロッとして即答する忍に開いた口が塞がらない。
(寝返りも辛そうだったのに)
昨夜の忍を思い出すと、心配材料しか出てこない。けれど、なにも言うことができず、不安げな眼差しを向けるだけ。
(心配だけど、私にはなにもできない)
できることと言えば、家事くらい。仕事に関してはまったく役に立てない。
無力さを痛感し、もどかしい思いを抱いていると、忍が口を開いた。
「じゃあ、鈴音の出勤前に弁当を買って、オフィスまで届けてほしい」
「えっ……」
「さすがに今日は、外に食べに行くのはしんどい」
ベットを立った忍に淡々と言われ、戸惑いながら小さく頷く。
「あ、ああ。はい。そういうことでしたら」
忍はベッドの上にちょこんと座っている鈴音を少しの間見た。鈴音はどぎまぎとして、つぶらな瞳を忍に向けている。
すると、忍のほうから視線を外し、踵を返した。
「行ってくる」
「い、行ってらっしゃい」
小声で呟くように言い、彼をそのまま見送った。
鈴音は忍が玄関から出ていく音を遠くに聞くと、一気に力が抜けて布団に崩れ落ちる。
しばし静止し、ふと思う。
(さっき、忍さんは『じゃあ』って言った。私の考えてたことバレてた……?)
忍は、鈴音が傷を負わせた責任感を抱きつつも、なにもできないと憤慨している気持ちを察していた。
だから、彼がわざと用事を自分に頼んだのだと鈴音は気づく。
見透かされていたのが、すごく恥ずかしい。
「鈴音」
しかし、耳に入ってきた声で、瞬時に意識がはっきりする。パッと見ると、ベッド脇に腰を掛けていた忍に覗き込まれていた。
鈴音は飛び起き、ベッドの上で正座する。忍がスーツ姿なのを見て、寝坊したのだとわかり、心底焦った。
「すっ、すみません! 私、寝坊して……」
昨夜、緊張していてすぐに寝付けないのもあったが、夜中に忍が苦しそうにしていて、鈴音が痛み止めを用意したりということがあった。
薬を飲んだあとは、忍もすぐに横になって休んでいたが、鈴音は神経が昂ってしまって眠れなかった。
なんともないという顔をして、平気だなどと言っているものの、やっぱりそんなことはないんだと考え始めてしまったせいだ。
そこからは罪悪感ばかりが大きくなっていき、考え疲れたところでやっと眠りについたというわけだ。そんな経緯から、鈴音は寝坊をした。
「まだ七時過ぎだ。遅刻はしないだろ?」
「七時……。はい、私は大丈夫です。……っていうか、仕事に行くんですか? 怪我は大丈夫なんですか?」
「ああ。あの後は普通に眠れたし、平気だろ」
昨日、夜中に起きてしまうほど痛むはずなのに、ケロッとして即答する忍に開いた口が塞がらない。
(寝返りも辛そうだったのに)
昨夜の忍を思い出すと、心配材料しか出てこない。けれど、なにも言うことができず、不安げな眼差しを向けるだけ。
(心配だけど、私にはなにもできない)
できることと言えば、家事くらい。仕事に関してはまったく役に立てない。
無力さを痛感し、もどかしい思いを抱いていると、忍が口を開いた。
「じゃあ、鈴音の出勤前に弁当を買って、オフィスまで届けてほしい」
「えっ……」
「さすがに今日は、外に食べに行くのはしんどい」
ベットを立った忍に淡々と言われ、戸惑いながら小さく頷く。
「あ、ああ。はい。そういうことでしたら」
忍はベッドの上にちょこんと座っている鈴音を少しの間見た。鈴音はどぎまぎとして、つぶらな瞳を忍に向けている。
すると、忍のほうから視線を外し、踵を返した。
「行ってくる」
「い、行ってらっしゃい」
小声で呟くように言い、彼をそのまま見送った。
鈴音は忍が玄関から出ていく音を遠くに聞くと、一気に力が抜けて布団に崩れ落ちる。
しばし静止し、ふと思う。
(さっき、忍さんは『じゃあ』って言った。私の考えてたことバレてた……?)
忍は、鈴音が傷を負わせた責任感を抱きつつも、なにもできないと憤慨している気持ちを察していた。
だから、彼がわざと用事を自分に頼んだのだと鈴音は気づく。
見透かされていたのが、すごく恥ずかしい。