契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
「傷の痛みはどうですか? 今朝の分の薬飲まれてませんよね。まだ間に合いますからどうぞ」

 そうしてカバンから薬を出し、途中で買った水も一緒にデスクへ差し出した。

「ああ。忘れてた」

 忍は今朝の分の薬を手に取り、あっけらかんとして言う。

「それとお約束していたお弁当なんですけど、急なことでランチボックスが私の分しかないことに気付いて……」

 鈴音はビニール袋に入った弁当の底を持ち、両手を前へ伸ばす。

「ですから、今日は申し訳ないのですけれど既製品のもので」

 無意識に視線を落とす。
 それは、エレベーターの中でも考えていたように、この選択を忍がどう受け取るのかわからなかったから。

 手にしている弁当は未だに受け取ってもらえない。

 いよいよ忍の反応がどんなものかと委縮し始めると、忍が不意に口を開く。

「鈴音」

 ただでさえ静かで格調高い部屋に気圧されているのに、忍の凛とした声でさらに肩に力が入る。
 鈴音は恐る恐る目だけで忍を見て、小声で返した。

「……はい?」

 すると、忍はシャープなデザインをした革張りの椅子から立ち上がり、鈴音の腕にかかっていたランチバッグを指差した。
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