契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
それから約ニ十分後、開店時間を迎える。
まもなくやってきた一番目の客を、鈴音は買って出るように接客し始めた。直後、店の電話が鳴る。

「はい。チェルヴィーノ東京直営店でございます」

佐々原が電話を取ったのを横目で見て、鈴音は目の前の客に集中した。

男性客はチラッと商品を見て、鈴音が差し出したパンフレットを持って、去って行く。わりとすぐに接客が終わったな、と見送っていると、佐々原がスッと隣にやってきた。

「山崎さん。今、電話があったんだけど……」
「え? どなたからですか?」
「それが、名前を言う前に切られちゃって。『山崎さんは今日いらっしゃいますか』とだけ聞かれて」

佐々原の言葉にドキリとする。普段、指名されるような客もいなく、思い当たらない。

(まさか)

山内だったら……を頭を掠め、ぞっとする。でも、もしかしたら、今朝電話をくれた忍かもしれないとも思う。
どちらにしても、落ち着いてはいられないし、佐々原には言えない。

「お客様かもしれませんね。ありがとうございます」

平静を装い、うっすら笑みを浮かべ、そう答えた。


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