契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
中番と呼ばれるシフトで、もうひとり女性スタッフがやってきていた。それから約三十分後に鈴音は休憩に入る。
社員通用口に入ってからが、ようやく息を吐ける。階段をのぼりながら、自分が持つ透明のカバンを眺めた。
(インク、ロッカーにしまっておこう。買おうと思っていたからラッキーだ)
インクと言えども、なかなかの高額だ。ひとり暮らしをしている鈴音にとっては、買うにも少し悩んでしまう。
顔を綻ばせていたのも束の間、インクの下になっていた携帯が見えて、足が止まる。
(あ……電話)
携帯をおもむろに取り出した。着信履歴を見て、暫し静止する。
(売り場に掛かってきた電話はともかく、これは間違いなく黒瀧さんだったわけだから、折り返し掛けてみなくちゃ)
階段から少し逸れた廊下に向かい、辺りをきょろきょろと見回す。静かなのを確認して、今一度携帯を見つめた。
相手がローレンスの副社長と知ってしまった以上、簡単に電話などしていいはずがないと思う。しかし、『お礼をする』と伝えたのは自分だ。
鈴音は勇気を出して、発信ボタンを押す。数回呼び出し音が繰り返され、きっと仕事中なのだと判断し、切ろうとした矢先、音が止んだ。
「あっ……も、もしもし! 山崎です」
『ああ』
短い返事は、間違いなく黒瀧の声。あの耳に心地のいい音程は、電話で聞いても同じだった。
鈴音は直立していた身体を前に倒し、頭を下げる。
「あ、あの……今朝、お電話を頂いてましたよね? 出れずに申し訳ありませんでした」
社員通用口に入ってからが、ようやく息を吐ける。階段をのぼりながら、自分が持つ透明のカバンを眺めた。
(インク、ロッカーにしまっておこう。買おうと思っていたからラッキーだ)
インクと言えども、なかなかの高額だ。ひとり暮らしをしている鈴音にとっては、買うにも少し悩んでしまう。
顔を綻ばせていたのも束の間、インクの下になっていた携帯が見えて、足が止まる。
(あ……電話)
携帯をおもむろに取り出した。着信履歴を見て、暫し静止する。
(売り場に掛かってきた電話はともかく、これは間違いなく黒瀧さんだったわけだから、折り返し掛けてみなくちゃ)
階段から少し逸れた廊下に向かい、辺りをきょろきょろと見回す。静かなのを確認して、今一度携帯を見つめた。
相手がローレンスの副社長と知ってしまった以上、簡単に電話などしていいはずがないと思う。しかし、『お礼をする』と伝えたのは自分だ。
鈴音は勇気を出して、発信ボタンを押す。数回呼び出し音が繰り返され、きっと仕事中なのだと判断し、切ろうとした矢先、音が止んだ。
「あっ……も、もしもし! 山崎です」
『ああ』
短い返事は、間違いなく黒瀧の声。あの耳に心地のいい音程は、電話で聞いても同じだった。
鈴音は直立していた身体を前に倒し、頭を下げる。
「あ、あの……今朝、お電話を頂いてましたよね? 出れずに申し訳ありませんでした」