契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
数十分後。

忍がリビングに戻ったときには、ダイニングテーブルに夕食が用意されていた。

並べられている皿を見下ろし、ひとこと呟いた。

「鯖……?」
「えっ。も、もしかして、苦手でした? 美味しそうな鯖だったのでつい……ごめんなさい!」

グラスをふたつ手に持ってやってきた鈴音は、顔を真っ青にして慌てた。

「いや。鈴音が謝ることじゃない。ただの好き嫌いだ。今日は食べる」
「や、無理しないでください! 今ほかになにか別のものを……」

グラスをテーブルに置き、急いでキッチンに足を向けた。瞬間、忍に手首を捕えられる。

びっくりして振り返ると、忍が首を横に振った。

「いいから」

鈴音は瞳を見開き、「はい」と小さく返すと、素直に従って足を止めた。
忍が席に着いてから、向かいの椅子に腰を下ろす。

ふたりの目の前には温かな夕食が並んでいる。
けれども、両者とも口をつけるどころか箸すらも手に持たない。

鈴音は手もとを見ていたが、なんとなく忍の視線を感じていた。すると、ついに忍が開口する。
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