契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
「少し出てくる。すぐに戻るから」
柳多が手短に秘書へ伝えると、女性は「はい」と頭を下げてふたりを見送った。
エレベーターホールに立つと、柳多が口火を切る。
「足は平気ですか?」
「はい。病院へ行くほどではないと思うので」
ボタンを押す柳多の背中に淡々と答える。柳多は鈴音を振り返り、薄い唇をまた開く。
「本当は副社長に用事があったのでは?」
すると、鈴音はやおら柳多を見上げた。
「大丈夫です。用があったのは柳多さんですから」
鈴音が射るような視線を向け続けていたところに、エレベーターが到着する音がした。
扉がゆっくり開いていくのにも構わず、ふたりは視線を交錯させたまま動かない。
「あっ」
突然聞こえた高い声が、ふたりの空気を変えた。エレベーターの中を見ると、星羅が乗っている。
星羅は鈴音を見つけた瞬間、睨みつけながらエレベーターを降りた。
「こんにちは。柳多さん」
「……星羅様」
いきなり現れた星羅に、柳多は珍しく驚いた顔をして見せた。
星羅は鈴音を無視して柳多に笑いかける。
しかし、鈴音はあからさまな態度に憤慨することもなく、柳多と星羅のやりとりを眺めている。
「今日はいかがされました?」
「ふふ。例のもの、お父様に交渉中だけれど、いい返事もらえそうな雰囲気だったから。そろそろ忍さんと直接お話したいなあって」
以前、ふたりでいたところを目撃した際は衝撃を受けた。けれど、今の鈴音は星羅と柳多の関係など大きな問題ではなかった。
それよりも、忍とは婚姻していなかった事実のほうが重大でショックだったから。
柳多が手短に秘書へ伝えると、女性は「はい」と頭を下げてふたりを見送った。
エレベーターホールに立つと、柳多が口火を切る。
「足は平気ですか?」
「はい。病院へ行くほどではないと思うので」
ボタンを押す柳多の背中に淡々と答える。柳多は鈴音を振り返り、薄い唇をまた開く。
「本当は副社長に用事があったのでは?」
すると、鈴音はやおら柳多を見上げた。
「大丈夫です。用があったのは柳多さんですから」
鈴音が射るような視線を向け続けていたところに、エレベーターが到着する音がした。
扉がゆっくり開いていくのにも構わず、ふたりは視線を交錯させたまま動かない。
「あっ」
突然聞こえた高い声が、ふたりの空気を変えた。エレベーターの中を見ると、星羅が乗っている。
星羅は鈴音を見つけた瞬間、睨みつけながらエレベーターを降りた。
「こんにちは。柳多さん」
「……星羅様」
いきなり現れた星羅に、柳多は珍しく驚いた顔をして見せた。
星羅は鈴音を無視して柳多に笑いかける。
しかし、鈴音はあからさまな態度に憤慨することもなく、柳多と星羅のやりとりを眺めている。
「今日はいかがされました?」
「ふふ。例のもの、お父様に交渉中だけれど、いい返事もらえそうな雰囲気だったから。そろそろ忍さんと直接お話したいなあって」
以前、ふたりでいたところを目撃した際は衝撃を受けた。けれど、今の鈴音は星羅と柳多の関係など大きな問題ではなかった。
それよりも、忍とは婚姻していなかった事実のほうが重大でショックだったから。