契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
「ありがとうございました……」

自宅前まで送ってもらった鈴音は、おずおずと頭を下げた。

あの後、道中は特に会話もなかった。ただ、飛んでいく景色を眺めながら、ずっと『嘘じゃないか』と思考をぐるぐる巡らせるだけだった。

窺うように顔を向けても、忍はまったく変わらぬ表情で、心が読めない。
だからこそ、鈴音はなおさら数十分前の話が信じがたい。

「じゃあ、失礼します」

これ以上ここに留まっていても、なにも変化はないんだろうと諦め、鈴音がドアを開けた。
そのとき、ようやく忍が口を開く。

「いつでも連絡してきていい。ああ、でも、聞ける用件は『イエス』だけだ。なるべく早めに頼むぞ」

足をアスファルトに下ろしているところにそう言われ、思わず勢いよく車から降りる。動揺した声で言い返した。

「しっ、しませ」
「そうすれば、オレも責任を持って、毎日きみを守ってやる。ほら。急いで家に入れよ。一応、見届けてから帰ってやるから」

言い方は命令口調で、少し乱暴に感じられる。
しかし、内容は鈴音を気遣っているものなだけに、反論することもできない。

鈴音は、ぐっと口を噤んで、一礼だけすると、そそくさと家に入っていった。

それを確認した忍は、再び車を走らせた。
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