契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
翌日も仕事だった鈴音は、朝からずっと、難しい顔をしたままだ。
その理由は、昨日の朝とは違い、忍だ。山内のことなど、今はすっかり頭から消えていた。
(結婚だなんて。ああいう、すごい肩書き持っている人って、考えることも私みたいな一般人とは全然違うのかも)
ほかのスタッフは倉庫や事務所へと席を外している。さらに、閉店間際で客がいないのをいいことに、カウンター内でぼんやり昨日のことを考えていた。
そこで、なにか視線を感じる気がして顔を上げる。見ると、前方に立っているのは、諸悪の根源、山内。
山内の顔を見つけた瞬間、ぞわっと全身に鳥肌が立ち、一歩後退る。
迂闊にも目を合わせてしまったが最後、山内は鈴音に微笑みかける。
「こんにちは。いやぁ、ぼくの仕事の都合で、二日間も鈴音ちゃんに会えなくて寂しかったよ。だから、昨日は電話したんだけど、タイミング合わなかったみたいだね」
(電話……! 昨日、売り場にかけてきたのは、この人だったんだ!)
正体不明の電話の主が明らかになって、じりじりと距離を詰めてくる山内を凝視した。
鈴音の表情を見れば、恐怖と嫌悪を抱いているのは一目瞭然。それなのに、山内は気づきもせず、終始にこやかな顔でカウンターに右腕を置いた。
そして、声を落として尋ねる。
「ねぇ。この間の人って……本当に彼氏?」
疑う言葉を放つ山内の目は、鈴音に対する異常な執着が感じられる異様な視線だ。
鈴音は言葉が出なければ足も動かず、ただ恐怖におののく。
そこで、閉店の音楽が聞こえてきて、山内は乗せていた腕を戻した。鈴音は、『これで誰かスタッフが戻ってくる』と安堵する。
そうして、少しだけ気持ちに余裕が持てた瞬間。
「あとで、答えを聞かせて。待ってるから」
山内はゆっくりと口角を上げ、目を細めて言い残し、去って行く。
言われた言葉が耳からこびりついて離れない鈴音は、ほかのスタッフが戻るまで動けずに固まっていた。
その理由は、昨日の朝とは違い、忍だ。山内のことなど、今はすっかり頭から消えていた。
(結婚だなんて。ああいう、すごい肩書き持っている人って、考えることも私みたいな一般人とは全然違うのかも)
ほかのスタッフは倉庫や事務所へと席を外している。さらに、閉店間際で客がいないのをいいことに、カウンター内でぼんやり昨日のことを考えていた。
そこで、なにか視線を感じる気がして顔を上げる。見ると、前方に立っているのは、諸悪の根源、山内。
山内の顔を見つけた瞬間、ぞわっと全身に鳥肌が立ち、一歩後退る。
迂闊にも目を合わせてしまったが最後、山内は鈴音に微笑みかける。
「こんにちは。いやぁ、ぼくの仕事の都合で、二日間も鈴音ちゃんに会えなくて寂しかったよ。だから、昨日は電話したんだけど、タイミング合わなかったみたいだね」
(電話……! 昨日、売り場にかけてきたのは、この人だったんだ!)
正体不明の電話の主が明らかになって、じりじりと距離を詰めてくる山内を凝視した。
鈴音の表情を見れば、恐怖と嫌悪を抱いているのは一目瞭然。それなのに、山内は気づきもせず、終始にこやかな顔でカウンターに右腕を置いた。
そして、声を落として尋ねる。
「ねぇ。この間の人って……本当に彼氏?」
疑う言葉を放つ山内の目は、鈴音に対する異常な執着が感じられる異様な視線だ。
鈴音は言葉が出なければ足も動かず、ただ恐怖におののく。
そこで、閉店の音楽が聞こえてきて、山内は乗せていた腕を戻した。鈴音は、『これで誰かスタッフが戻ってくる』と安堵する。
そうして、少しだけ気持ちに余裕が持てた瞬間。
「あとで、答えを聞かせて。待ってるから」
山内はゆっくりと口角を上げ、目を細めて言い残し、去って行く。
言われた言葉が耳からこびりついて離れない鈴音は、ほかのスタッフが戻るまで動けずに固まっていた。