契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
約ニ十分後。車は都内のタワーマンションに到着した。鈴音は地下駐車場で降り、不安げな顔をして忍の後を付いていく。

忍が裏口ドアにキーをかざすと、ドアが開いた。中に一歩入るなり、鏡のように足元を反射させる磨かれたタイルに驚く。落ち着いた暖色の照明は、明らかに一般的なマンションとは違った高級感を醸し出していた。

少し歩き進めると、ホテルのロビーのような広い空間に出る。そこにコンシェルジュが立っていて、忍の姿を見るなり、恭しく頭を下げた。

奥へ足を向け、エレベーターホールに辿り着く。エレベーターに乗って、忍が最上階である四十のボタンを押した。
鈴音は、マンションに着いてからまだ十分程度なのに、見るものすべてに驚かされる。

「こ、こんなすごいところ、初めて……」

つい、口から零すと、忍が反応して振り返った。

「すぐ慣れるさ」

(絶対、そんなことない!)

鈴音は心の中で否定し、忍の背中にこっそり視線を送る。

駐車場にあった車はどれも高級車。二十四時間態勢のコンシェルジュ。エレベーターにまでも、キーを必要とするくらいの厳しいセキュリティ対策。

こんな仰々しいところに、庶民暮らしの鈴音がすぐ慣れると思えるわけがない。

まるで夢の中にでもいるような感覚で立っていると、エレベーターは止まって扉が開いた。

忍は広い廊下を歩いて行き、一番奥の玄関前で足を止めた。ここでもキーをかざすだけでロックが解錠される。

忍がドアを開け、鈴音は中に通されると想像以上の光景に目を大きくした。
玄関の広さが、自分の住むワンルームの部屋と同じくらいに見えるからだ。

(玄関でこの広さだったら、ここより先はいったいどうなってるの……?)

「なにしてる? 早く入れ」
「えっ。あっ、お、おじゃまします」

唖然としていた鈴音だが、忍に言われ、慌てて靴を脱いだ。
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