契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
「柳多の報告だと、大体のものは揃えたと聞いた。あとは、これだな」

忍が紙袋からなにかを取り出すと、鈴音はようやく少し目線を上げた。

見えたのは、ローレンスのショップバッグ。そして、忍の手にはローレンスの商品があった。

それがなんのアイテムかまで確認する前に、鈴音は忍に顎を捉えられる。
間近で視線が合い、さらに心拍数は増す。でも、顔を動かすことは叶わなくて、仕方なく目を逸らした。

「目を閉じろ」
「え……」
「試してみる」

そこでようやく、アイメイクをされるのだとわかり、ゆっくり瞼を落とす。初めは、顔を見なくて済んでよかったと胸を撫で下ろしたのだが……。

(なんか、逆に見えないと視線を感じる気がして……。心臓が破裂しそう)

しんとしたリビングで瞳を閉じると、忍の息遣いまで感じられてしまう。気にしないようにしようとすればするほど、忍が触れているところも熱くなってくる。

無防備な状態に限界を感じ始めているところで、忍が口を開く。

「今度は、口を軽く開け」

囁くような声が、やけに色っぽい。鈴音の緊張はピークに達する。『早く早く』と心の中で何度も繰り返す。
ようやく、唇に触れていたものが離れていくのを感じて、『あと少し』と自分に言い聞かせた。

「もう目を開けていい」

忍に言われた通り、ゆっくり瞼を押し上げる。ようやく、拘束から解放されたと安堵するや否や、目前に忍の端整な顔があって息が止まった。

「オレが見繕って、社から持ってきたものを使ってみたけど」

鈴音は、自分がどんなふうになったのかを確認する術がない。けれど、今はそれよりも、想像以上に忍が近くにいることのほうが問題だった。

(心臓が口から飛び出そう!)
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