契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
「なるほど。確かに、妻にするには堅実そうで適しているな。ウチの財産で遊び回るようなタイプにも見えない」
「親父!」

忍が一喝するように短く声を上げると、光吉は悪びれる様子も見せず、優雅に足を組み肘をついた。鈴音の顔を品定めするかのように見回す。

「ああ、すまない。私が好きなタイプの女性だ、と言いたかっただけさ。さぁ、遠慮しないで」

ちょうど運ばれてきた料理を視線で指し、鈴音ににこやかに言う。
鈴音は笑顔で返事をしながらも、内心では光吉の言葉にいちいちドキリとし、冷や汗が背中を伝っていた。

(顔は笑っているんだけど、心が読めない。気を引き締めなくちゃ)

改めて自分を戒め、テーブルナプキンを慎重に手に取り膝元に置く。この緊張感の中で、慣れないマナーを守って食事するというミッションをやり遂げなければならない。

テーブルマナーを頭の中で整理しているところに、またもや光吉が口を開く。

「鈴音さん、だったかな? 忍とは、どうやって出会ったんだい?」
「えっ」

不意打ちの質問に、一瞬頭が真っ白になる。

話しかけられることはあっても、まさか馴れ初めなるものを初っ端から訊かれるだなんて思いもしなかった。
目を剥いて固まっている鈴音に、忍が助け舟を出す。

「そんな話、突然訊かれたら困るだろ。彼女もまだ緊張しているんだから」
「べつにいいだろう? 若いふたりの話を楽しみにしていたんだぞ」

光吉は笑いながらグラスを手にし、注がれたワインを軽く回して口に含んだ。

忍もまた、まさかふたりの出会い話に興味を持つなんていうことは予想外だった。訊かれるとしても、鈴音自身のことぐらいだと思っていた。

そのため忍は、もう少し裏で話を合わせておくべきだったと後悔する。
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