契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
「妹、鈴音に似てたな」
「えー? そうですか? そういえば、忍さんと明理さんはあまり似てませんね。男女だからですかね」
「さぁな」

そんな他愛ない会話をしながら、影を伸ばして歩く。

「いつがいい?」
「なにがですか?」

急に忍から質問された意味がわからず、首を傾げて聞き返す。忍は足を止め、鈴音を真っ直ぐ見て言った。

「婚姻届けを提出する日だ」

今度は鈴音が忍を見つめる番だ。
あまりに驚いてしまって、声を出すどころか瞬きも忘れる。

(婚姻届けなんて、明日にでもすぐ出されるのかと思ったのに、希望を聞くなんて。いったいどういう風の吹き回し?)

鈴音は未だに答えられない。ふたりは、ただ視線を絡ませ合う。
その光景は、傍から見ればただの恋人同士にしか見えなかった。

ようやく鈴音が口を開いたときには、さらに陽が傾いていた。

「え……えーと、八月八日……とか?」
「八月八日?」
「ほら。末広がりで縁起がよさそうな……」

鈴音が人差し指を立て、明るく振る舞う。変なことを口走ってしまったのをごまかすためだ。

(なにを、ふつうの恋人みたいに。そんなこと気にするなんて無意味なのに)

鈴音は数秒前の自分の発言を取り消したくなった。
赤い顔で狼狽えていると、忍が堪え切れなくなったようで笑いだす。

「いっ、いつって聞かれたから、一般的に考えて答えただけで! べつにいつでもいいんですけど!」

鈴音が平静を装おうとしているのすら、忍にとっては面白く、まだ笑いは止まらない。
もうなにも言うまいと鈴音が黙っていると、少し落ち着いた忍が微笑んだ。
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