契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
「せっかくだから、もう少し先まで歩いて行くか。いつも車だしな」
鈴音は忍が提案した言葉に驚いて足を止める。すぐに忍も立ち止まり、鈴音を振り返った。
「どうした?」
「あ、いえ……」
無駄なことを嫌う忍が、時間のかかるほうを選んだことに驚倒した。さらに吃驚したのは、どこか表情が柔らかく感じたからだ。
(夕陽のせい?)
今思えば、実家で酒を勧められる可能性も考慮して、車で来なかったのかもしれないと鈴音は思った。いくら結婚の許可をもらいに行くとはいえ、出会った頃の忍のイメージだと自分の都合が第一で、効率のいいことを優先するはずなのに、と鈴音は目を丸くしていた。
「ちょっと都心から離れれば、こんなに静かなところがあったんだな」
そよそよと吹く風に、忍の黒髪が靡く。
「たまにこういうのも悪くない」
忍が横目で鈴音を捉え、僅かに口角を上げた。
ふたりは微妙な距離を保ったまま、並んで歩く。それはさながら、中学生のデートのような雰囲気で、鈴音は自然と胸がときめいてしまっていた。
忍を盗み見ては、この手に抱き寄せられたりしたんだな、と回想する。鈴音はおもむろに忍の腕から視線を上げた。端整な横顔を見つめ、口元に目がいった。
(思えば、キスだってしたんだった)
急にそのことを思い出すと、まるで恋をしているような動悸が全身を巡り始める。
(う……わ……。なに、これ)
鳴り出してしまうと、心音は速まるばかり。
鈴音が自分の変化に戸惑っていると、忍が不思議そうな顔をする。
「鈴音?」
鈴音は忍が提案した言葉に驚いて足を止める。すぐに忍も立ち止まり、鈴音を振り返った。
「どうした?」
「あ、いえ……」
無駄なことを嫌う忍が、時間のかかるほうを選んだことに驚倒した。さらに吃驚したのは、どこか表情が柔らかく感じたからだ。
(夕陽のせい?)
今思えば、実家で酒を勧められる可能性も考慮して、車で来なかったのかもしれないと鈴音は思った。いくら結婚の許可をもらいに行くとはいえ、出会った頃の忍のイメージだと自分の都合が第一で、効率のいいことを優先するはずなのに、と鈴音は目を丸くしていた。
「ちょっと都心から離れれば、こんなに静かなところがあったんだな」
そよそよと吹く風に、忍の黒髪が靡く。
「たまにこういうのも悪くない」
忍が横目で鈴音を捉え、僅かに口角を上げた。
ふたりは微妙な距離を保ったまま、並んで歩く。それはさながら、中学生のデートのような雰囲気で、鈴音は自然と胸がときめいてしまっていた。
忍を盗み見ては、この手に抱き寄せられたりしたんだな、と回想する。鈴音はおもむろに忍の腕から視線を上げた。端整な横顔を見つめ、口元に目がいった。
(思えば、キスだってしたんだった)
急にそのことを思い出すと、まるで恋をしているような動悸が全身を巡り始める。
(う……わ……。なに、これ)
鳴り出してしまうと、心音は速まるばかり。
鈴音が自分の変化に戸惑っていると、忍が不思議そうな顔をする。
「鈴音?」