結構な腕前で!
「何をしてるんです」

 いきなり手前の障子がすらっと開き、せとかが顔を出した。
 はるかが、さっと後ろの男を示して口を開く。

「部長。こちら、柔道部の土門(どもん)くん」

「はぁ。ここは柔道部ではないですが」

 間抜けな答えを返すせとかを無視し、はるかは、どうぞ、と土門なる者を茶室に促す。

「失礼いたす」

 武士か、という挨拶と共に軽く頭を下げた土門は、はるかの横をすり抜けて茶室に入った。
 のし、という擬音がぴったりだ。
 廊下が、ぎ、と軋んだ。

「あ、じゃあとりあえず、お菓子は一つ多くお願いしますね」

 萌実に向かって言い、せとかは、ぱし、と障子を閉めた。

「あ、じゃあ白玉団子、一個ずつ少なくしましょう」

 萌実がすでに分けていたお椀にお玉を突っ込むと、せとみが、ささっと自分のお椀を取り上げた。

「駄目駄目! 俺のはやらん!」

「何言ってるんです。あの人お客さんだし、どう見てもせとみ先輩よりも食べますよ」

「いきなり来て人の団子を奪う奴なんか客じゃねぇよ」

「小さい団子の一つぐらい、いいじゃないですか」

「だったら奴に我慢させろよ」

 ぎゃーすか言い合っていると、はるかが台所に入ってきた。

「全くせとみは、子供みたいなんだから」

 そう言って、お盆にスプーンを用意する。
 そして、ちらりと萌実を見た。

「せとみのお菓子への執着は半端ないから、折れないわよ」

「そのようですね」

 諦め、萌実もお盆にお菓子を乗せると、はるかに続いて茶室に向かった。
 茶室にはいつもの釜の前にせとかがおり、その前の土門と向かい合っている。
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