結構な腕前で!
「う~ん。お申し出はありがたいのですが」

 腕組みしていたせとかが言う。
 萌実は皆の前に器を置きながら、部屋の奥にいたはるみにこそっと耳打ちした。

「何があったんです?」

「土門くんがね、茶道部にも入りたいって」

 え、と萌実は土門を見た。
 茶道部に入りたい、と言うものの、着ているものは思いっきり柔道着ではないか。

「土門くんは一年ながら柔道部のエースなんだけど。まぁ力とか体力には自信あるだろうけどねぇ」

「でもエースなんだったら、柔道部としても困るんじゃないですか?」

「だから、兼部希望なんだって」

 萌実は怪訝な顔で、土門をしげしげ見た。
 柔道部のエースだけあり、体格は並外れていい。
 一人増えただけなのに、茶室が狭く感じるほどだ。

 こんな人に茶道など、全く似合わない。
 そもそもこんな人が兼部してまで茶道をしたいと思うだろうか。

「ま、まぁ趣味は人それぞれだけど。意外な趣味ですねぇ」

 こそっと言うと、はるみが思いっきり困った顔をした。

「それがねぇ~……。ちょっとややこしそうなのよ」

 あのね、とはるみが萌実に身体を寄せたとき、どん、と土門が畳を叩いた。
 それだけで、前に座るせとかの身体が揺れた。

「不純な動機とお思いじゃろうが、決してそれだけではない! わしが入れば鬼に金棒。はるか殿も危ない目を見ずに済むし、皆も助かるじゃろう? この学園のためにもなることぞ!」

 何歳だよ、という言葉遣いだ。
 若干胡乱な目で土門を見ていた萌実だが、ん? と首を捻る。
 不純な動機?

「土門くん、はるかのために入部したいらしいの」

「何だとぉ!!」

 今の今まで他に目をやることなく団子をがっついていたせとみが、いきなり大声を上げた。
 せとみは萌実の横にいたので、萌実は耳を押さえて悶絶する。
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