結構な腕前で!
「どういうことだよ! おいお前!!」

 萌実のことなどお構いなしに、せとみは片膝立ちで土門に詰め寄る。
 片手の上にはしっかり団子の器が乗ったままだが。

「そこもとは?」

 じろり、と土門がせとみを見る。
 せとみは片膝立ちなのに、座っている土門のほうが、まだ背が高い。
 大きな身体と相まって、岩が迫るような威圧感がある。
 だがせとみも負けじと声を荒げる。

「俺ぁ茶道部の裏部長だ! 戦闘部隊の隊長だぜ!」

 普通に聞いたら前半と後半の繋がりがさっぱりわからない。
 が、それはあくまで普通の学校での話で、土門は、ああ、と納得したようだ。
 が、険しい顔のまま、ぐるりと茶室にいる茶道部の面々を見た。

「ここにおられる方々で、茶道部は全て。となると、そなたが率いている戦闘部隊もこれだけ、ということ」

「これだけいれば十分よ」

 ふん、と鼻を鳴らすせとみに、土門はまた、ばん、と畳を叩いた。

「何を仰せか! 男子より女子率のほうが高いではないか! 女子に戦わすなど、武士の風上にもおけぬ!」

「ここに武士なんていねぇよ!」

「心意気の問題ぞ! おぬしのような粗暴者に、はるか殿を任せるわけにはいかん!」

 またも、せとみの顔が引き攣った。
 先程から土門は、明らかにはるかを念頭に喋っているようだ。
 萌実の頭上にも、ぴこーん、と豆電球が灯った。

「土門くんは、本気ではるか先輩を慕ってきたってことですか」

「そのようね」

 はるみが頷く。
 これはまた、確かにややこしそうなライバルだ。

「てめぇみたいな助平野郎が、はるかを守れるかよ!」

「何じゃとぅっ?」

 だん、と土門も片膝立ちになる。
 茶室全体が、みし、と軋んだ。
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