結構な腕前で!
 そこでふと、萌実は肩の違和感に気付いた。
 やけに重い。
 視線を動かしてみると、せとかの頭頂部が目に入る。

「……うわわわっ! せっ先輩っ!!」

 慌てて萌実が身体を捻った拍子に、ずる、とせとかの頭が落ちる。
 肩に乗っていたので、せとかの頭はそのまま萌実の太ももに落ちた。

「~~~~っ!!!」

 膝枕状態である。
 最早萌実は動くことすらできず、真っ赤になって固まった。

「ややっ。北条殿、どうされた!!」

 甘い空気は野太い声と、どすどすという騒々しい足音に吹き飛ばされる。
 ようやく土門が、廊下を超えてこちらに駆け寄ってきた。

「これはいかん。これ、気を確かにっ!」

「……気は確かです」

 せとかが、細く目を開けて小さく言う。
 心なしか眉間に皺が寄っている。

 具合が悪い故か、土門の対応に対する感情か。
 気は確かだ、と言うわりに、せとかは起き上がる気配もない。

「とりあえず土門は、廊下の欠片を綺麗に集めてください」

「心得た!」

 早速土門は廊下を走り、箒と塵取りを持ってくる。
 掃除要員なだけに、掃除道具の在処はばっちりだ。

「あ、じゃあ私も……」

 そうは言ってみたものの、萌実の膝には起きる気配のないせとかの頭が乗っている。

「あの、先輩……」

「土門。向こうの部屋に風呂敷があるので、そこに全てまとめてください」

 萌実の言葉に被るように、せとかが土門に指示を出す。
 言われた通り、土門は風呂敷を持ってくると、集めた欠片を入れて行った。

 その間萌実は座ったまま。
 せとかが起きないので動けないのだ。

「これでよぅござろうか」

 大量の煙の欠片を包んだ風呂敷を結び、土門が言う。
 土門は特に萌実が手伝わないのも気にならないようだ。
 先に入ったものが先輩、という考えに偽りなし。
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