結構な腕前で!
「大丈夫ですよ。片手でも部長殿を落とすことはありませぬ」

 土門が言うが、いえ、とせとかはそれを制した。

「一応それも魔の塊なわけです。守りの力の強い南野さんが持ったほうがいい。あなたが途中でぶっ倒れたら、誰も運べません」

「う、な、なるほど」

 実際ぶっ倒れたことがあるだけに、土門もすぐに納得し、抱えていた風呂敷包みを萌実に差し出した。

「ではお頼み申す。何、さほど重くはあるませぬ故」

「あ、はい」

 受け取った風呂敷包みは、さほどどころか全く重くはない。
 何だか優しい人だなぁ、と萌実はしげしげと土門を見た。

 せとかを軽々負ぶって山道を危なげなく進む大きな影は頼もしい。
 すでに日は沈み、まだ微妙に明るいとはいえ最も物の見えにくい時間帯だ。
 だがこういう人が傍にいると安心する。

---はるか先輩が、こっちに惹かれてもしょうがないかな---

 せとみも腕っぷしは、まぁそれなりだが、頼り甲斐があるかと言われると微妙だ。
 もっともそれは、いつも戦闘時に放ったらかされる萌実だからかもしれない。

---そう考えると、せとか先輩は私を守ってくれるもんね!---

 例え自分のカンフル剤としてでも。
 そう自分で突っ込んで空しくなっていると、ちらりと視線を動かしたせとかと目が合った。
 せとかは萌実と目が合うと、ばつが悪そうに少し視線を彷徨わせた。

「先輩、どうしたんです?」

 もしやケロッピになりそうなのかと聞いてみるが、特に顔色は悪くない。
 いや、と小さく首を振り、せとかは目を瞑った。

「こうも頼れる人が傍にいると、僕などあっという間に霞みそうですね」

 ぼそ、と小さく言う。
 うっかりさっきの思考を読まれたようで、萌実は焦った。

「い、いえいえ! そんなことありませんよ! せとか先輩だって、私にとってはちゃんと頼りになる先輩ですっ!」

 だって守ってくれるし!
 例えカンフルだとしても!(←しつこい)

 心の中の突っ込みは、さすがに口にはできない。
 が、せとかはちょっと笑った。

「安心しました」

 聞こえないぐらい小さく言って、せとかはまた目を閉じる。
 あ、やっぱり眠かったんだ、とほのぼのしたのも束の間、萌実も土門もせとかの家を知らないではないか。

「わーっ! ちょっと先輩! 起きて!」

「北条殿っ! 道案内がないと送れませぬ!」

 ぎゃーぎゃー騒ぎながら、三人は何とか北条家へと辿り着いたのであった。
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