結構な腕前で!
「すっごいお家……」

 純日本家屋の立派な門の前で、萌実は思いっきり気後れしていた。

「見かけだけよ~。一応茶道の家元だからね」

 はるかが言いつつ、がらがらと戸を開ける。
 何故ここにはるかがいるのかと言えば、せとかの家の近くで萌実が一計を案じたのだ。

 北条家を訪ねれば、おそらくせとみがいるだろう。
 土門と鉢合わせると、またややこしくなるのではないか?

 そう思い、はるかに連絡を取った。
 幸いはるかの家は思い切り隣だったので、そう手間取ることなく合流できたのだ。

「せとみ! お邪魔するわよ!」

 玄関を通り越して何故か庭に回ったはるかが、縁側に向かって声をかける。
 すぐに、奥のガラス戸が引き開けられた。

「はるか? 何だよ……」

 顔を出したせとみの表情が一変する。

「何だよ! 貴様ぁ!」

 一瞬にして黒せとみの登場である。
 魔扱いかよ、と突っ込みたいところをぐっと堪え、萌実は険悪ムードなせとみと土門の間に割り込んだ。

「あのっ。今日橘先輩たちが帰ってから、えらい魔が現れて。せとか先輩が一人で力使ったから、前後不覚になっちゃって。土門くんが送ってくれたんですっ」

 後半を強調する。
 せとみは仏頂面のまま、土門をじっと見た。
 でかすぎるので、背後のせとかが完全に隠れて見えないのだ。

「ほらのいて! お邪魔するわよ」

 土門を睨んだまま動かないせとみに業を煮やし、はるかがせとみを押しのけた。

「いいから、上がって。土門くん、悪いけど部屋までせとかをお願いできる?」

「そ、それはもちろん。ではお邪魔する」

 ぺこりと頭を下げ、はるかに続いて土門が縁側に上がる。

「おい……」

「うるさいわね。せとみはせとかを抱えて部屋まで行けないでしょ? 感謝しなさい」

 文句を言いそうになったせとみをぴしゃりと遮り、はるかは土門を先導する。
 萌実も小さく「お邪魔します」と呟いて、そそくさと土門の後を追った。
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