結構な腕前で!
「……まぁいいでしょう」

 手にした扇をぱし、と鳴らし、せとかはため息をついた。

「今後こういうことはないように。ま、今回は特別忙しいときにさぼったということで、間が悪かったのもありますしね」

「そうね……。反省してます。ごめんなさい」

 ぺこりと頭を下げるはるかに、せとかは今度は、軽く頷いた。

「でははるかは、この後土門と道場の雑巾がけをするように」

「あ、はい!」

 途端に、ぱぁっとはるかの顔が輝く。
 その横で、せとみの顔は大きく引き攣った。

「せとか先輩、どういうつもりでしょう」

「さぁ……。でも私は相手はともかく、うちら以外の人とそういう風になって欲しいから構わないんだけど。せとかもそうなんじゃない?」

 ひそひそと言い、萌実とはるみはこそこそと移動して道場の出口に向かった。

「さ、今のうちに出ておきましょう。せとかの雷に巻き込まれるわ」

「う、そ、そうですね」

 こそこそこそ~っと道場の扉まで辿り着いたとき、ぱし、と再び扇を打つ音がした。

「あなたは元々さぼり魔でしたが、まぁ節度は守られていました」

 節度あるさぼり魔って何だろう、と密かに思いつつ、萌実ははるかとはるみに続いて道場を出た。

「ちょっとはるか。どういうつもりなの」

 外に出るなり、はるみがはるかを問い詰める。
 先を歩いていたはるかが、くるりと振り向いた。

「悪かったわよ。まさかせとみまで来てないとは思ってなくて」

 ぺこりと頭を下げる。

「そんなことはどうでもいいのよ。せとみのことよ。いえ、土門くんのことって言ったほうがいいのかしら」

「何でせとみ?」

 きょとん、とはるかが言う。
 はるみは、じ、とはるかを見た後、後ろの萌実に目を転じる。

 萌実も小さく首を傾げた。
 どうやらはるかは、せとみの気持ちに気付いていないようだ。

「……じゃ、まぁそこはいいわ。ていうか、あの土門を選ぶ辺りがはるからしいっていうか」

 ぽん、とはるかの肩を叩き、はるみは部室へと向かった。
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