結構な腕前で!
 さて道場では、せとかがせとみの前に胡坐をかいていた。

「全くせとみは成長しない。いつまではるかに拘ってるんです」

 とんとんと扇で肩を叩きながら言うせとかを、せとみはじろりと睨む。

「お前みたいな朴念仁にはわかんねーよ」

「失礼な。僕は面倒ごとを自ら起こすような愚を犯さないだけです」

「またそういう小難しいこと言いやがって……」

 がしがしがし、と頭を掻き毟り、せとみは大きくため息をついた。

「そもそもイトコに欲情するあなたも理解できませんが、先のことまで考えてるんですか?」

「何てこと言うんだ! このむっつり野郎っ!」

「そういうことでしょう。あなたの抱いている感情を、男子的に表現したまでですよ。そんなことはいいんです。欲情するなら、相手を選びなさい、と言ってるんです」

 何だか、何だかんだで人間も動物なんだな、と妙に納得してしまう言い方だ。
 しかも若い男子の言うことか。

「イトコは駄目ってか?」

「駄目とは言いません。が、避けるに越したことはないでしょう。血筋的にはいいと思いますが、この先ずっと上手くいけばいいですよ? どろどろ修羅場の末別れることになってご覧なさい。別れた後も親戚づきあいは続くわけです。あなたの場合、十中八九あなたが振られるでしょう。どろどろの末振られた相手と、一生付き合っていけますか?」

「あんまりだ……」

「そう、あんまりです。そういう可能性も考えてますかってことです」

「そうじゃない。お前のその言い方があんまりだ。何故俺が振られる前提なんだ」

「わかり切ったことだからです」

 ぴしゃりと言う。
 せとみは泣きそうになった。
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