結構な腕前で!
「あなたがいたたまれないだけではなく、周りの僕らも気まずいですよ」

「そ、それはまぁ……」

「もちろん、めでたく結婚まで行ってくれるのであれば何も言いません。けど高校で付き合ってそのままゴールインするカップルなんて、いないのが現実です」

 どこ情報なんだか。
 いくら出所の怪しい情報だとしても、こうもはきはきと言われると、確実な情報に思えてしまうのが怖い。

「お前はそこまで考えて、人と付き合ってるのか」

 上目遣いに言うと、せとかは、はぁ? という目を向けた。

「そんなことを考えなければならない相手など、端から圏外です」

「お前のその合理主義が羨ましいよ」

「そう考えると、南野さんは掘り出し物ですね」

 不意に、にやりとせとかが口角を上げた。
 おや、とせとみも身を乗り出す。

「せとかは萌実ちゃん狙いか」

「今ふと思っただけですよ。何もややこしいイトコに気を取られなくても、もっと強力な子が入ってくれたじゃないですか」

「そうだな……。萌実ちゃんかぁ……」

 せとみも腕組みして考え込む。
 何だか二人を取り巻く空気が黒くなったようだ。

「萌実ちゃんなら、俺に分があるぜ」

 せとみが挑発的な目を向ける。
 だが。

「さぁ、それはどうでしょう」

 珍しく、せとかも不敵な笑みを浮かべる。

「人嫌いなせとかに、可愛い後輩を落とす術はあるまい」

「人嫌いなわけではないです。興味のない人間と関わるのが面倒なだけですよ。それに」

 ぴ、と扇をせとみの鼻先に突き付ける。

「はるかの代わりにしたいだけでしょう。そんな奴には渡せません」

「い、今はともかく、それこそ先はわかんねぇだろ。お前だって萌実ちゃんの力だけが目的だろうが。変わらねぇ」

 ばちばち、と二人の間に火花が散る。
 しばし睨み合った後、ぱし、とせとかが扇を鳴らした。

「とりあえずは、きちんと部活に出るように。今後私的な感情でのさぼりは許しません」

 私的な感情、というのは、あくまで色恋のことだろうか。
 お菓子がどうの、というのだって私的な感情と言えるのだが。
 が、せとみはため息と共に、小さく呟いた。

「わかったよ」
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