結構な腕前で!
---つか、せとか先輩も一緒に帰るのが当たり前みたい---

 それはそれで、萌実的には嬉しい。
 だが何故かなかなか距離は縮まらない。
 ぼーっとしているせとかとは、あまり話が弾む、ということがないのだ。

---まぁ緊張しちゃうってのもあるんだよね---

 せとみと違って、そうフレンドリーな雰囲気でもないし、元々好きな人なのだ。
 大分打ち解けたとはいえ、まだ緊張する。

「わ、私も手伝ってきたほうがいいですかね」

 一応萌実も一年坊主だ。
 先輩であるはるかに掃除させるのは如何なものか。

「いや、これはあくまで罰ですから」

「せとみ先輩は無罪放免で?」

 しかも土門は端から無罪ではないか。

「重罪のせとみ先輩が無罪放免で、無罪の土門くんと初犯のはるか先輩が罰を受けるのは、おかしくないですか?」

 萌実が言うと、せとかが、ぶは、と吹き出した。

「はははは。面白い表現ですねぇ」

 おお、貴重な先輩の笑い顔だ、とスマホを出したいところを堪え、じ、と目に焼き付ける。
 まじまじせとかを見、ふと萌実はあることに気付いた。

 せとみは結構にこにこしているが、あの笑みは表面上のもののような。
 せとかは滅多に笑わないが、今のように笑うときは本心で笑っているというか。

---てことは、せとみ先輩のほうが感情が読めないのかも---

 無表情であっても、せとかの表情が動くときは、心も動いていると思う。
 だがせとみの場合は、普段表情がころころ変わるだけに、返ってそれが本当の心を映しているのかわからないように思うのだ。

---わかりやすいと思ってたけど、せとみ先輩のほうが本心はわからないかも---
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