結構な腕前で!
 ふぅ、とせとかがため息ともとれる風に息をつく。
 そして萌実の背後から元の位置に戻った。

「うちの学校は、やたらと魔が多いじゃないですか。大元はこの山なので、ここが前線なんですけどね、学校のほうにも全く漏れがないわけではないんです」

「ああ……まぁそうでしょうね」

 ここにはこれほど頻繁に魔が現れるのに、学校のほうに現れないわけはないと思っていた。
 でも校舎のほうでは、滅多に見ない。

「校舎のほうに現れる魔は、華道部が相手してるんですよ」

「へ? 華道部?」

「北校舎の、あの部分ですよ」

 ちょい、とせとかの指差すほうを見れば、先ほど霞んで見えたところだ。

「だからあそこの気がおかしいわけですか」

「そう。でもそれに気付けるのは、それなりの者です。言ってみれば茶道部員のみ、てところですかね。いや、さすが南野さん」

 感心したように、せとかが言う。
 だがそういうことは、あまり気付きたくないことではないだろうか。

「茶道部に華道部って、何でそういう部ばっかりアクティブなんですかねぇ」

 少々呆れ気味に、萌実は北校舎を眺めた。
 どうやら華道部もお休みではないようだ。

「じゃあ、華道部と協力して治安を守っているわけですか」

 そう考えれば格好良いじゃん、とせとかを見ると、何故かせとかは渋い顔をした。

「……とりあえず、お茶ください」

「あ、はい」

 慌てて萌実は途中だった作法を再開し、せとかのお茶を点てた。

「そうそう。南野さんもテスト勉強したいのでしたら、明日は勉強しましょうか」

 せとかの提案に、さっきのせとかの妙な表情のことなど、萌実はすっかり頭から吹き飛んだ。

「はい! じゃあ明日の放課後は、図書室でお待ちしております!」

 満面の笑みで言った萌実に、またせとかが妙な顔をする。

「え、部室でいいじゃないですか」

「だって茶室、机ないじゃないですか」

 う、とせとかが口を噤む。
 すっかり上機嫌な萌実は、残りの饅頭を口に放り込むと、冷めてしまったお茶を一気に飲み干した。
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