結構な腕前で!
「まぁ、あんまり知らないんじゃないですかぁ?」

「でもだからこそ、萌実さんは私たちの部に来てくれたんですよ~」

「「そういう運命なんです~」」

 嬉しそうに言うはるかとはるみだが、萌実的には微妙だ。
 どうせ運命的な出会いなら、先輩一人で十分。
 しかも物の怪のオプションなんていらない。

 あれ、でも、と少し萌実は考えた。
 せとか(だかせとみだか)に惹かれたのも、そういう運命だからだろうか?

 茶碗を受け取りながら、じ、とせとかを見る。
 その瞬間、あ、と小さく呟き、せとかは柄杓を突き出した。
 萌実の頬ぎりぎりを、びゅっと風を切る音と共に柄杓が通り過ぎる。

「あ、雑魚」

「ちょっと待ってよ、せとか」

「「壺用意~」」

 すぐさまはるみが立ち上がり、手に取った壺をはるかに投げる。
 それを受け止めると同時に蓋を取り、今しがたせとかに叩き落とされたものを、見事壺にキャッチした。

「……来るぜ」

 低い声に顔を向けると、せとみが片膝を立て、一方の壁を見ていた。
 その顔は、先までの爽やかさとは一変、凶悪な笑みを浮かべている。

「南野さんも、そろそろ戦ってみますか?」

「い、いえ……。まだ今一つ自信が……」

 萌実がとりあえず茶碗を置いたとき、じわ、と壁に一点が黒くなり、そこから白い煙が噴き出した。

「来やがれ!」

 言うなりせとみは、懐から扇を取り出した。
 それをそのまま、横に振るう。
 まるで居合のようだ。
 煙は両断され、上半分が、むわ、と飛び散った。

「わー。もぅ、散らばる~」

「せとみ、力加減してよね~」

「「集めて回るの大変なんだから~~」」

 はるかとはるみは騒ぎながらもちょろちょろと走り回って、壺に煙の欠片を回収していく。
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