結構な腕前で!
「まぁ小さかったってのもあるでしょうね。あんまり大きかったら、一撃では倒せないかもしれませんし。でも素晴らしい反応でした」

 にこりと笑うせとかに、萌実のテンションも上がる。
 さっき双子に褒められてもさほど嬉しくなかったが、せとかに褒められるとこの上なく嬉しい。
 やはり恋の力は偉大だ。

「ああありがとうございますっ! 頑張ります!」

 ぐ、と握り拳を作る萌実だが、せとかはその手に、そ、と手を添えた。

「あ、でも少し赤くなってますね」

 咄嗟だったので、加減がわからなかったのだ。
 元々拳を振るう機会など、そうない。

「なるほど。いくら素手でも大丈夫とはいえ、やはりこういうリスクがあるわけですね。大丈夫ですか?」

 さらりと手の甲を撫でられ、萌実は最早天にも昇らん心地だ。

「だだだだ大丈夫ですっ!」

 慌ててせとかから手を取り返す。
 このままでは萌実の心臓がもたない。
 そのとき、がらりと障子が開いた。

「あ~、せとか、えっち~」

「萌実さんに何してるのよ~」

「「せとか、大人しいふりして猛獣だからね~」」

 きゃいきゃいと言いつつ、双子が部屋になだれ込んできた。

「人聞きの悪い。南野さんが手を少し負傷してたので、診てただけです」

 ぱ、と手を放し、せとかは身体を戻す。
 どっと萌実は疲れを感じた。

「え、怪我?」

「大丈夫?」

「「救急箱あるよ?」」

「あ、だ、大丈夫です。ちょっと赤くなってるだけで、怪我はしてないので」

 わらわらっと駆け寄ってくる双子を、萌実は両手を振って遮った。
 せとかは元のぼーっとした雰囲気を取り戻し、茶碗に湯を注いでいた。
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