初恋のキミは最愛ヒーロー

あの夢を見た直後だけに、なんとなく会話をするのが気まずい。


でも、何か急用かもしれないし…。


少し躊躇いながらも電話に出た。


「もしもし?」


『よっ、壱夜!』


聞こえてきたのは、桃舞の明るく弾んだ声。


いつもどおりの雰囲気に、気まずさが少しずつ和らいでいく。


『具合どうだ?熱は?昼メシ食ったか?』


「調子は、まずまずかな。熱は…多分下がった。昼メシは、これから適当に食う予定」


そんなに質問ばかりすんなよ…と思いつつも、俺の体調を心配してくれる桃舞の優しさに胸が温かくなるのを感じた。


『そっか。お前が体調崩して休むのは、すげぇ久しぶりだよな。近頃、体に無理させるようなことしてたんじゃねぇだろうな?』


「してねぇよ。普通に生活してたって、風邪ぐらいひくだろ」


一瞬、肩がビクッと跳ねてしまったけれど、平静を装って言葉を返す。


実際は、紅月のことを調べるため、夜に出歩くことが多かったり、色々と考え事をして寝不足気味の日が続いていたのが原因だろうけど…


本当のことを、桃舞に話すわけにはいかない。



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