初恋のキミは最愛ヒーロー
「あっ、えっと……これは………」
「別に何でもねぇよ」
事情を説明しようとしたタイミングで、壱夜くんがゆっくりと立ち上がる。
私に背を向けているけど、声の雰囲気からして不機嫌そうな表情をしてるんだろうな…と感じた。
「それより、紅月は?合流して探してたんだろ?」
「実は、ここに来る途中で、紅月の熱狂的ファンだって言う女子たちに遭遇しちまってさ。巻くために一緒に逃げ回ってたんだけど…」
「はぐれた…とか?」
「いや、上手く巻いた。でも、この建物の手前のところで今度は隣町の女子高の生徒たちに囲まれちまってさ。逃げる余地が無くて、今…紅月が対応中」
「ったく…。様子、見に行ってくる」
小さく溜め息をついた壱夜くんは、スタスタと足早に医務室を出て行った。
気まずい空気にしちゃった…。
ついさっきまで、壱夜くんと和やかに会話してたんだけどな…。