初恋のキミは最愛ヒーロー
「少し恥ずかしそうに“コーヒーを飲みたいけど粉が見当たらない”って言ったんだ。どうやらコーヒーメーカーを使おうとしたけどコーヒーの粉の置場所が分からなかったらしい」
「そうだったんだね」
「あんな顔する父さんを見るのは初めてだったからビックリしたけど、ちょっと嬉しかった。温かみのある表情を俺に見せてくれたから」
“ちょっと”って言うより、かなり嬉しそう。
玲音くんを見ていたら、私も笑みが零れてしまった。
「俺はコーヒー粉の場所を知ってたから、自分のコーヒーと一緒に父さんの分も淹れたんだ。そのあと部屋に戻ろうとしたら、父さんに“少し二人で話さないか?”ってぎこちない声で呼び止められた」
「じゃあ…二人きりで会話したの?」
「ああ。最初はお互い口数が少なかったんだけど、だんだん喋るようになってきてさ。気付いたら4時間ぐらい話してた」
「そ、そんなに!?」
「食べ物の好き嫌いや趣味、学校生活のことや休日の過ごし方とか、話題は多岐に渡ってたから。まあ、自分もあそこまでガッツリと会話するとは思わなかったけど」
そっか。
私はお母さんと日常的に会話するけど、玲音くんは殆どお父さんと話してこなかったんだもんね……。
色んな話をしてたら4時間ぐらいあっという間に経つのかもしれない。