初恋のキミは最愛ヒーロー

「その会話の中で、父さんが俺についてどう思ってたのかも話してくれた」


それは、きっと…玲音くんが一番聞きたかったことだろう。


遠くの景色を眺める玲音くんの横顔を見つめた。


「“ずっと向き合うことから逃げてしまって、すまない”って言われたよ。本当はずっと俺とコミニュケーションとりたかったみたいなんだけど、どんな風に距離を縮めたらいいか分からなかったって言ってた」


「………」


「なんとかしたいと思っても、もっと嫌われるんじゃないか、避けられるんじゃないかって考えが過って、仕事が忙しいのを理由に何もしないまま、ここまで来てしまったって。何度も頭を下げて謝ってた」


緩やかな風が吹き抜ける中、少しの間だけ沈黙した玲音くん。


フッと笑って目を伏せた。


「“今さら謝ってんじゃねぇよ”って思う自分もいたんだけど、父さんを嫌って避けて、近寄らせない空気を作ってた俺も俺だから、その言葉を口にはしなかった。代わりに“ありがとう”って言ったよ」


「えっ…?」


「今までの父さんの気持ちを、ありのままに話してくれたのが嬉しかったのも事実だから。俺は邪魔者なんかじゃなかった。ちゃんと大事にされてた」


私の方に顔を向けた玲音くんは照れくさそうに笑みをこぼす。


その笑顔は、今まで見たことないぐらい幸せに溢れていた。


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