初恋のキミは最愛ヒーロー
教室に入り、自分の席に到着すると隣で本を読んでいた壱夜くんが顔を上げる。
視線を感じたけれど目を合わせにくくて、そのまま席に座った。
「……おはよ」
程なくして聞こえてきた声に、私は壱夜くんの顔を見ないまま“おはよう”と言葉を返す。
バッグからノートやペンケースを出していると、壱夜くんが私の肩を人差し指でツンとつついた。
「莉彩、顔色悪くないか?」
その言葉に一瞬だけ固まってしまったけど、すぐに何事もなかったかのように授業の準備を進める。
「もしかして、体調悪いんじゃ……」
「大丈夫。ちょっと夜更かししたから眠いだけ」
やっぱり目は合わせられなくて、自分の机を見たまま話す。
「そっか。あまり無理はすんなよ?」
いつもなら壱夜くんの優しさが嬉しくてたまらないのに、今日は胸が苦しい。
声が出てこなくて、私は小さく頷くことしか出来なかった。