初恋のキミは最愛ヒーロー

教室に入り、自分の席に到着すると隣で本を読んでいた壱夜くんが顔を上げる。


視線を感じたけれど目を合わせにくくて、そのまま席に座った。


「……おはよ」


程なくして聞こえてきた声に、私は壱夜くんの顔を見ないまま“おはよう”と言葉を返す。


バッグからノートやペンケースを出していると、壱夜くんが私の肩を人差し指でツンとつついた。


「莉彩、顔色悪くないか?」


その言葉に一瞬だけ固まってしまったけど、すぐに何事もなかったかのように授業の準備を進める。


「もしかして、体調悪いんじゃ……」


「大丈夫。ちょっと夜更かししたから眠いだけ」


やっぱり目は合わせられなくて、自分の机を見たまま話す。


「そっか。あまり無理はすんなよ?」


いつもなら壱夜くんの優しさが嬉しくてたまらないのに、今日は胸が苦しい。


声が出てこなくて、私は小さく頷くことしか出来なかった。



< 378 / 436 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop