初恋のキミは最愛ヒーロー
「そっか。楽しく過ごせているみたいで良かった……」
莉彩のお母さんは、安心した表情を浮かべた。
学校の話、家ではあまりしないのか…。
莉彩だったら、お母さんに色々と話していそうな気がしたんだけど。
ちょっと意外だな。
「学校での出来事について話はしてくれるんだけど、楽しかったことや嬉しかったことだけなのよ。嫌なことや辛かったことの話が全くないの。毎日良いことばかりじゃないと思うんだけど…」
莉彩のお母さんはコーヒーを一口飲むと、寂しげに瞳を揺らした。
「あの子、お父さんが他界してから弱音やワガママを全く言わなくなっちゃって。私を困らせないように、余計な心配をかけないようにって、どんな時も“良い子過ぎるぐらい良い子”なのよ」
「……」
「今朝もね、体調が悪そうだったから学校を休んでもいいよっていう感じの話をしたんだけど、“全然平気”って笑顔で返されちゃった」
それ、すごく分かる。
莉彩は他人にはお節介を焼くけど、自分の悩みや苦しみや辛さは自分自身で処理しようと抱え込む。
周りが心配したり気遣ったりすることのないように“私は大丈夫”っていうアピールをして一線を引こうとするんだよな。