【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
「あれ、こんばんは。オーナーと、お約束ですか?」
向井はにこやかな笑顔を芽衣に向けた。どうやら向井は完全に芽衣の顔を覚えているようだ。
「違います。全然そんなんじゃなくて」
狼狽える芽衣に
「えっ? 芽衣さんって、ここのオーナーと知り合いなんですか?」
隣にいた目を大きくして祐美が聞いてくる。
「いや、あのね…」
なんていえばいいのだろう。
何から話せば? どこまで話せばいいだろう。
単なる知り合い。いや、知り合いだったというべきか。
言葉につまってしまう芽衣。
「今、オーナー呼びますから、少々お待ちください」
気を利かせているつもりなのか、頼んでもいないのに向井が梨田を呼びに行こうと歩き出してしまった。
「違うの。今日は、ただの客だから」
慌てて芽衣は向井のシャツの袖を掴んでひきとめる。
「え?……」
戸惑った表情で向井は芽衣を振り返った。
「今日は食べに来ただけなの。この前も結局食べてないし」
「ああ、そうでしたよね…」
納得したように頷く向井を見て、芽衣はホッとしていた。
「だから、梨田さんには特に言わなくても…」