【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
「それなら、大丈夫。俺今日からモテないようにする自信あるから」
「どんな自信よ」
隣を同じようにスニーカーを脱いで歩く梨田を見上げた。
「顔はグラサンで隠すし、ダサい服着るように研究して出来るから。車も乗らないし、いつも羽振りが悪いふりも出来る」
「は? そんなことまでなんでするの?」
「簡単だよ。芽衣の彼氏になれるなら俺、相当頑張れる自信あるから」
陽にあたる梨田の顔は、気のせいか輝いているように見えていた。
根拠のない自信なんか、なんの気休めにもならない。信じた人間だけが馬鹿をみる世の中だ。
「一回会っただけで、そんな気になれるのがすごいわね」
「だから、どうかな? 俺を芽衣の彼氏にしてみたら?」
「しないわ。私、強引な人は大嫌いなの」
「えー、そこも?わかった。強引にしない。常に受け身にする」
「出来るの?」
なんでも安請け合いするような男は、信用できない。
「受けるから、芽衣から俺を襲ってきてよ」
「私から? あり得ないし、あなたを襲いたくない」
「なんで、俺からは指動かさないからさ。ハグくらいしてくれよ」
両手を広げてくる梨田。
「嫌よ」
首を横に振り、きっぱりと断る。
「じゃあ、キスは? 」
「は? しないわよ。するわけないじゃない」