【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
ゆっくりと瞼を開けると、辺りはオレンジ色に染まっていた。
頭を上げて、その絶景に息を飲む。
「綺麗」
「だろ?」
自分の景色みたいに自慢するように言う男の「だろ?」には閉口してしまう。
せっかくの景色も台無しだ。
「あなたがいなければ、きっともっと…」
嫌味を言うつもりで、隣に座る男を眺めた。
夕日に照らされた梨田の顔は、ギリシャ神話の神々みたいに神々しくて綺麗だ。
「ん?」
自分の方を向いた梨田を見てドキッとしてしまう芽衣。
これだ。
この人は、私に夕日じゃなくて神々しくみえる自分の顔を見せたかったんだ。
全て計算づくなモテ男。
だから、モテる男は嫌い。
女を落とす為なら、労力を惜しまない。普段どおりにしていれば十分なのに。
それ以上にモテたいらしくマメさをプラスしている。
芽衣は、梨田から目を逸らして水平線に沈む夕日を見る事に没頭すると決めた。
だが、自分の肩にかけられていた男もののシャツに気がついて再び梨田の方へ目を向ける。
梨田の着ている白いTシャツの右肩や右胸の辺りが、よく見ると汚れて見える。
これって、もしかして。
ジッと目を凝らして、芽衣はゴクリと唾を飲み込んで梨田を少し見上げた。