【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
「ね、これってもしかして私のメイク?」
Tシャツを指さすと、梨田は芽衣の頭をポムポムっと軽く叩いた。
「そうなんだよ。芽衣が俺にもたれてくれたんだ。サンキュー」
私、この人にもたれて寝てたんだ。
何してんだろ、私。
「サンキューって…」
メイク汚れは、なかなか落ちないのに。
「シャツもありがとう。ごめんなさい」
シャツを返すと、梨田は芽衣の頭を引き寄せコツンと自分の頭につけた。
「どーいたしまして。芽衣の寝顔すごーく可愛いのな」
「見たの?」
「そりゃ、見るよ。彼氏の特権だろ?」
「彼氏じゃないから」
夕日がもう少しで沈みそうだった。
芽衣は、ジッとしていられずに立ち上がる。
同じく立ち上がり、梨田はシャツの袖に腕を通した。
シートを2人で畳んでいるときに梨田はくしゃみを2回もした。
風邪ひいたんじゃ?
かっこつけて、私にシャツなんか貸すから。
芽衣は梨田を気にしながらシートを畳んだ。
駐車場へ戻ったころには、もう夕日が落ちて辺りはかなり暗くなっていた。
「寒くなってきたな」
車のトランクにシートをしまってから、自分の腕をさする梨田。