妹の恋人[完]
『やだ、どうしたの?コウヘイ君』

話す前に笑いだしてしまった俺が不思議だったらしく、少し怒ったような声で名前を呼ぶ高橋さん。

「今、忙しかった?」

『宿題やってて終わった所』

パタン、と本を閉じたような音がして、洋服がすれる音が聞こえた。

どこかに座りなおしたんだろうか。

「メールありがとう。今日はごめんね」

『ううん。急に寒くなってきたから、風邪ひいたら大変でしょ?』

くすくす笑いながら、寒いよねという高橋さん。

昼間はまだ上着こそ要らないけど、日が落ちると急に寒くなってきたこの頃。

季節は確実に秋から冬へと移動していた。

「あのさ。俺、部活やめたんだ」

『うん』

何を言うでもなく、小さくうなずく高橋さん。

「いつかまたバスケをやれるようになるかわからないけど、今はできないから」

いつ、できるようになるかわからないから。

「中途半端がいやで、やめることにした」

『コウヘイ君らしいね』

優しく明るい声で俺の名前を呼んでくれる高橋さん。

電話の向こうの彼女の笑顔を想像して、なんだか胸につかえていたいやな気持が癒された気分だ。
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